最初に決めておきたい3つのこと
書き始める前に、対象業務・引き継ぐ相手・引き継ぎの期限を揃えます。たとえば「月次請求処理を、11月から担当する後任者へ、10月末までに引き継ぐ」と具体化すると、必要な資料や確認の優先順位が決めやすくなります。後任者が初めて担当する業務なら、専門用語の説明や参照先も必要です。
業務が複数ある場合は、いきなり大きな一冊にまとめず、業務単位で整理すると後から更新しやすくなります。
引き継ぎ資料に入れておきたい8項目
- 01 業務の目的
- 何のために行う仕事か。完了と判断できる状態は何か。
- 02 担当範囲
- 自分が行う作業と、ほかの担当者に依頼する作業の境界。
- 03 通常の手順
- 開始条件・操作の順番・入力内容・成果物の保存場所。
- 04 判断基準
- どんな条件なら処理を進め、どんな場合に確認を挟むか。
- 05 例外対応
- 通常どおり進まないときの対応、保留条件、過去に起きたトラブル。
- 06 関係者・確認先
- 誰に何を聞くか。担当者不在時の代替連絡先も含める。
- 07 関連資料・システム
- 参照先のURL、共有フォルダ、権限申請方法。パスワードは資料に直書きしない。
- 08 期限・周期・未解決事項
- 日次・月次などの実行タイミング、直近の締切、確認待ちの事項。
記入例:「手順」だけでなく「判断」も残す
月次の請求処理を例に考えます。以下は説明用の架空の例で、特定企業の運用ルールではありません。
請求対象の一覧を出力し、請求書を作成する。
請求対象の一覧と前月からの変更点を照合する。金額や契約条件に不一致があれば、請求書を確定する前に所定の担当者へ確認する。確認者の不在時の代替連絡先は未確認。
後者には「どのときに止めるか」「誰に確かめるか」があります。一方、不在時の確認先は分かっていないため、推測で埋めずに未確認事項として残します。金額の許容範囲や承認権限は会社ごとに異なるので、社内の正式なルールと照合してください。
コピーして使える、引き継ぎ資料の記入ひな形
次の項目をコピーし、まず一つの業務について埋めてみましょう。分からない部分は空欄のままにせず、「未確認」として担当者と確認期限を記録すると、抜けを追いやすくなります。
業務名:
目的・完了条件:
対象範囲と担当者:
実施タイミング・期限:
通常の手順:
判断基準(進める/確認する/止める条件):
例外時の対応:
確認先・代替連絡先:
関連資料・システム・必要な権限:
未確認事項:
- 内容:
- 確認する人:
- 確認期限:
最終確認者・確認日:
引き継ぎ資料に認証情報や個人情報を無条件に貼り付けないよう注意しましょう。アクセス方法や権限の申請先を記し、実際の情報共有は社内規定に従います。
共有する前の確認ポイント
- 後任者が資料やシステムへアクセスできるか
- 通常と異なるケースの判断先が書かれているか
- 書かれている情報の出典や確認者が分かるか
- 未解決の疑問が隠されずに残っているか
- 共有後に後任者が質問できる機会があるか
「資料を渡した」と「引き継ぎが完了した」は別
前任者が文章を用意しても、後任者が内容を理解できたとは限りません。共有後に実際の業務を想定して確認してもらい、必要に応じて質問・修正する工程を設けましょう。
- 前任者
- 内容が実態に合っているか、根拠や未確認事項が残っていないかを確認する。
- 後任者
- 資料を読み、不明点を質問する。実務で使う資料やシステムにアクセスできるかも確認する。
- 管理者・承認者
- 組織としての完了条件と残課題を確認し、必要な承認を行う。後任者の確認だけで完了とみなさない。
最初から完成形を目指す必要はありません。まず一つの業務から、通常手順・判断基準・確認先の3点を書き出すところから始めるのがおすすめです。資料がまだない場合は、「引き継ぎ資料がないときの始め方」も参考にしてください。